はじめに
長谷川式認知症スケール(HDS-R)とMMSE(Mini-Mental State Estimation)は認知症診断に欠かせないスケールです。
日本の公的文書ではHDS-Rが優先されていることも多く、どっちかだとHDS-Rを取ることが多いでしょうか。
診療報酬上もちょっとだけ点数がついたので取る機会が増えたかもしれません。
医師の負担軽減のために看護師さんに任せるケースもあるかと思います。
その場合はしっかりやり方を説明しないと正確に評価できない場合もあるので注意してください。
意外に正確な取り方が分からなかったりするので整理しました。
HDS-Rのそれぞれの項目について
何歳ですか?
±2歳の誤差はOKとします。
認知症が進んでくると正確に言えず、生年月日を言ったりして取り繕う方がいます。
今日は何年何月何日何曜日ですか?
日時の見当識を問います。
カレンダーなどは見ないように指示してください。
分解してそれぞれ聞いても構いません。
私たちがいるこの場所はどこですか?
場所の見当識を問います。
- 自発的に答えられれば2点
- 家ですか?施設ですか?病院ですか?学校ですか?などの選択肢で答えられれば1点
- それでも答えられなければ0点
正確な名称がわかっていなくてもOK。場所の理解が重要です。
これから3つの言葉を言いますので覚えてください
「桜」、「猫」、「電車」が基本です。
それぞれ関係がない言葉を列挙します。
即時再生の機能を見ます。必ず覚えたものを言ってもらってください。
アルツハイマー型認知症でも即時再生は保たれていることが多いです。これができないと失語症や意味性認知症などを疑うことになります。
100から7を順々に引いてください
これは計算力をみていると言うよりは、注意力やワーキングメモリーを見ています。
100-7の次に93-7は?と聞いてはいけません。
最初の7を引くという教示を頭に留めたまま作業ができるかをみます。
最初の計算ができなかったらそこで打ち切りです。
私が数字を順番に言いますのでそれを逆から言ってください
逆唱の課題です。これも注意力やワーキングメモリーを見ています。
最初の3桁で間違ったらそこで打ち切りです。
先ほど覚えてもらった言葉を言ってください
遅延再生の機能を見ます。
アルツハイマー型認知症の方は特にここで失点するので重要です。
- ヒントなしで答えられたら2点
- ヒントありで答えられたら1点
- ヒントありでも答えられなければ0点
ここに5つの物がありますので覚えてください。隠しますので何があったか教えてください
5つの関連がない物品を覚えてもらいます。
よく病院にあるアリセプトのセットを使うことが多いですが、関連がないものであればなんでもOKです。
視覚による記憶をみます。
野菜の名前をできるだけたくさん言ってください
語の流暢性を見ます。
前頭葉機能が落ちていると言えなくなります。前頭側頭型認知症で重要です。
採点
20点以下が認知症の疑いがあるとします。
これだけでは診断できないので注意してください。
また21点以上でも認知症と診断する場合があります。
認知症の診断はHDS-Rだけでなく、またMRIなどの画像所見だけでもなく、その他の問診で得られる所見も併せて総合的に判断します。
特に、知能が高い方や社会的地位が高い方はスケールでは高得点をとってしまうことがあるため、元々の機能とギャップがあるか、生活障害が出てないかを十分に聞き取りをしてください。