はじめに
大学院に入ってすぐに研究を始められる方はごく少数だと思います。研究として世に出していくには唯一無二である必要がありますが、それを見つけていくことも大学院で学ぶべきものです。
立派な研究をやりたいという思いもあると思いますが、一方で限られた期間で研究を遂行し、卒業しなければならないということも念頭におかないといけません。
私の事例をお話しするとともにパターンをご紹介します。
この記事のサマリー
- クリニカルクエスチョン→リサーチクエスチョンの流れを大事にしテーマを決めていく
- 最適なメンターを見つけることが重要
- 教授からテーマを与えられるケースもある
- 助教クラスの先生の研究を手伝いながらテーマを見つけるケースもある
- 所属教室で誰もやっていない分野のテーマは危険
クリニカルクエスチョンからリサーチクエスチョンを見つける
まずは正攻法。
これまでの臨床経験から疑問に思ってきたこと(クリニカルクエスチョン)をもとに研究テーマを決めていく方法です。
クリニカルクエスチョンを構造化し、リサーチクエスチョンにしていく際に使われるのが、PICO(もしくはPECO)です。
- P:Patient(患者)もしくはParticipant(参加者)
- I :Intervention(介入)、E:Exposure(暴露)
- C:Comparison(比較、対照)
- O:Outcome(結果)
例を挙げたいと思います。
統合失調症患者への持効性注射剤の効果がどれほどあるのかなど疑問に思っていたとすると、
- P:統合失調症患者に
- E:持効性注射剤を導入すると
- C:経口薬のみの患者に比べ
- O:再入院までの期間が長くなるか
などと構造化することができます。
この課題は、台湾のLin氏らにより2019年に論文化されています。
このようにテーマを考えていくためには日々の臨床を疑問を見つけながらやっていく必要があるともに、関連する論文がないかを十分に調査する必要があります。
大学院に入って、何もやることがなければ、気になることの関連論文を片っ端から読むことも重要です。
メンターを見つける
「メンター」とは、日本語では指導者などと訳されます。
指導教員は一般的には教授ですが、そうではなく気軽に相談できる相手がメンターとなります。
自分が考えている研究テーマを近いことをやっている先生が良いかもしれません。
注意しなければならないのは、たくさんの業績を上げている人が、メンターとしても優秀とは限らないことです。
私の場合は、臨床をやっている時にお世話になった先輩で、当時助教の先生に様々なことを教わりました。結果的にはその先生のやっていることとは違う研究を行うことになりましたが、研究テーマの考え方、研究の進め方、大学院生時代の過ごし方など多くのことを学びました。
ちなみに、「私のメンターになってください!」と言った訳ではなく、自然と困った時などに相談をしていたという感じです。
多くの大学は自主性が重んじられており(放置されており)、中々何も進まず1、2年過ぎていくことが多いため、早めに相談相手を見つけておくことが重要です。
教授(もしくは准教授など研究グループ長)から研究テーマが与えられるケース
教授というのは様々なプロジェクトをかかえ、多く研究費を持ってきている方が多いです。ただ実際に動かせていない研究もあるため、それの一部を医局員に振るケースがあります。
研究テーマをもらえるといえば聞こえが良いですが、雑用を与えられるとも言えます。
もし、自分が興味があるネタであれば問題ないですが、そこまで興味がないネタの場合は結構辛いと思います。
教授は多忙のため指導を直接受けれることは無いに等しいです。
この場合は、良いメンターを見つけることが重要です。
また、大きい大学ではいくつかの研究グループに分かれており、そのトップの先生から仕事が与えられるかもしれません。この場合も指導を受けれる頻度はかなり限られると思います。
研究グループに分かれている場合は、ある程度自分の興味で所属先を決めれるので、興味がないネタで辛くなるリスクは下がります。
助教クラスの先生の関連テーマを行うケース
放置系の教室で頼るとすると少し上の先輩になるかと思います。
この場合はメンターを兼ねることになると思います。
大学院を卒業したばかりの先生は、自分もそうでしたが、卒業していろいろやりたいことある中で、学生時代にはなかった様々な雑務に追われるようになっています。
そのため自分の研究に割く時間はかなり限られ、猫の手も借りたい気持ちです。
その気持ちに付け込み寄り添い、研究を手伝っていると関連研究などできるケースがあります。
誰もやっていないテーマを見つけるケース
自分のクリニカルクエスチョンからリサーチクエスチョンが生まれ、それを実行していこうとした時に、周りには誰も近いことをやっていないケースがあります。
その場合のデメリットとして、指導を受けにくいこと、一からデータを集めなければならず時間を多く要してしまうことが挙げられます。
そのテーマを遂行したいと考えても、所属教室内で誰もやっていないようなテーマは、現実問題として困難が立ちはだかるリスクが高いです。
そのためテーマを自分で考える際にも、所属教室でどのような研究がアクティブに動いているか把握し、それに近いところで見つけるのが良いと考えられます。
まとめ
研究テーマを決めるにあたり、まずは自分で考えることが大事ですが、現実的に今置かれている環境で短期間で実行可能かを吟味する必要があります。
また、メンターを見つけ、相談してもらいながら進めるのが最も重要と私は考えています。